新時代のディスクカップリング
寸法・CAD・価格
単位 : mm
品番 | スリップトルク | 最大軸穴径 (mm) |
常用トルク (N・m)*1 |
最高回転数 (min-1) |
慣性 モーメント (kg・m2)*2 |
静的ねじり ばね定数 (N・m/rad) |
許容偏心 (mm) |
許容偏角 (°) |
許容エンド プレイ (mm) |
質量 (g)*2 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
XGHW-27C-3-5J | 0.7 | 8 | 1.5 | 23000 | 4.6×10-6 | 300 | 0.12 | 2 | ±0.2 | 45 |
*1: 負荷変動による常用トルクの補正は必要ありません。
軸穴径のサイズにより、軸のスリップトルクがカップリングの常用トルクより小さくなる場合があります。XHW-C
*2: 最大軸穴径での値です。品番 | 標準軸穴径 D1 | ||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3 | 4 | 5 | 6 | 6.35 | 8 | 9.525 | 10 | 11 | 12 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
XGHW-27C-3-5J | ● | ● | ● | ● | ● | ● | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
品番 | 標準軸穴径 D2(慣性体側) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
5 | 6 | 8 | 10 | 11 | 14 | 16 | 19 | |
XGHW-27C-3-5J | ● | ● | ● | - | - | - | - | - |
●全商品に六角穴付きボルトが付属しています。
●適用軸径の推奨寸法許容差はh6およびh7です。
●D1側のみ軸穴およびキー溝の追加工を行います。追加工サービスをご利用ください。
●Dカット軸に取りつける場合は、軸のDカット面の位置に注意してください。
スリップトルク
クランピングタイプのXGHW-Cは下表のように、軸穴径によって軸のスリップトルクが異なります。選定の際は注意してください。単位 : N・m
外径 | 軸穴径(mm) | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3 | 4 | 5 | 6 | 6.35 | 8 | 9.525 | 10 | 11 | |
27 | 0.7 | 1.7 | 3 | ||||||
36 | 2 | 2.9 | 4 | 4.2 | 5.8 | ||||
41 | 3.5 | 4.9 | 5.5 | 7.9 | 10 | 11 | 12 | ||
49 | 6 | 8 | 13 | 18 | 19 | 23 |
軸の寸法許容差h7、硬度34-40HRC、XGHW-Cの寸法・価格表に記載のねじ締めつけトルクの値での試験値であり保証値ではありません。
スリップトルクは使用条件により変化します。事前に実際と同じ条件でテストしてください。
材質・仕上げ
XGHW-C | |
---|---|
ハブ | A2017 アルマイト処理 |
スペーサ | A2017 アルマイト処理 |
ディスク固定ボルト | SCM435 四三酸化鉄皮膜(黒) |
ディスク | SUS304 |
カラー | SUS304 |
六角穴付きボルト | SCM435 四三酸化鉄皮膜(黒) |
慣性体 | S45C 無電解ニッケルメッキ |
弾性体 | FKM |
特長
- 適用推奨モータ
XGHW-C | |
---|---|
サーボモータ | ◎ |
ステッピングモータ | ◎ |
一般汎用モータ | ● |
- 特性
XGHW-C | |
---|---|
バックラッシュ |
◎ |
高ゲイン対応 | ◎ |
高トルク | ◎ |
高ねじり剛性 | ◎ |
許容ミスアライメント | ○ |
振動吸収性 | ◎ |
使用可能温度 | -10℃~60℃ |
- 高剛性カップリングに制振機能を付与したフレキシブルカップリングです。
- 高剛性と制振機能を両立する構造です。制振機能は、回転伝達部とは別の慣性体・弾性体で構成された動吸振器*1により実現しています。
*1: 動吸振器は、振動体に補助的な慣性体を弾性体を介して結合することで、振動体の共振現象を抑制する機構です。
- モータ軸側のハブから従動軸側のハブまでの回転伝達部に樹脂弾性体を使用していないため、高剛性です。
- サーボモータ高ゲイン化に加え、高負荷用途における高い位置決め精度を実現します。
用途
アクチュエータ/表面実装機/精密XYステージ/インデックステーブル使用上の注意
取付けの際、慣性体に過度なトルク等の力を加えないでください。慣性体が脱落する恐れがあります。選定
軸径・常用トルクによる選定
軸径と常用トルクが交差した領域が選定サイズになります。選定例
選定条件が軸径φ14、負荷トルク3N・mのとき、選定サイズはXGHW-41Cです。サーボモータの定格出力による選定
定格出力 (W) |
サーボモータ仕様*1 | 選定サイズ | ||
---|---|---|---|---|
モータ軸径 (mm) |
定格トルク (N・m) |
瞬時最大トルク (N・m) |
XGHW-C | |
50 | 6-8 | 0.16 | 0.48 | 27C |
100 | 8 | 0.32 | 1.1 | 27C |
200 | 9-14 | 0.64 | 2.2 | 36C |
400 | 14 | 1.3 | 4.5 | 41C |
750 | 16-19 | 2.4 | 8.4 | 49C |
*1: モータ仕様は一般的な値です。詳しくは各モータメーカーのカタログを参照してください。減速機などを使用しない場合のサイズです。
サーボモータのゲインと整定時間
サーボモータのゲインとはどのくらい指令どおりの動作をさせるかを表す指標です。ゲインを上げると整定時間を短縮できますが、上げすぎるとハンチングが発生しサーボモータの制御ができなくなります。
ハンチングを抑えながらゲインを上げるためには、サーボモータの各パラメータを微調整する必要があります。
しかし、弾性部に金属を使用したディスクタイプなどのカップリングでは、ゲインを上げた時にハンチングが発生しやすい傾向にあり、パラメータの微調整のみでゲインを上げるには限界があります。
ハンチングが発生した場合、一般的には回転系の剛性を上げるため、より高剛性のカップリングへの変更が推奨されています。
しかし実際は、カップリングの剛性を上げるだけではボールねじを含む回転系全体の剛性を上げることはできず、効果がない場合があります。
高剛性制振タイプ
高剛性制振タイプXGHW-Cは、高剛性のディスクタイプに動吸振器による制振機能を付与することで、通常のディスクタイプよりも高ゲインで使用でき、整定時間の短縮が可能です。また、制振機能により面倒なパラメータ調整作業が軽減され、最適なパラメータ出しに要する時間が短縮できます。
なぜ高剛性制振タイプXGHW-CはディスクタイプXHW-Cよりもゲインを上げられるのか?
XGHW-CがディスクタイプXHW-Cよりもサーボモータのゲインを上げられる要因はボード線図から読み取ることができます。ボード線図の位相遅れが-180°の点における0dBとのゲイン幅をゲイン余裕、折点周波数における180°との位相幅を位相余裕と呼びます。
一般的にサーボ系のゲイン余裕は10~20dB、位相余裕は40~60°が目安とされており、サーボモータのゲインを上げるとゲイン余裕が小さくなり、10dB以下になるとハンチングが発生しやすくなります。
XGHW-CとXHW-Cの限界ゲイン(ハンチングの発生がなく、カップリングが使用できるゲインの上限値)を比較すると、XGHW-Cはゲイン余裕が大きく、10dBを大きく上回っています。そのため、サーボモータのゲインをXHW-Cよりも上げることができます。
ディスクタイプ限界ゲイン時のゲイン余裕
ボード線図
高剛性制振タイプとディスクタイプの比較
サーボモータとアクチュエータを使用した試験で、次のことを確認しました。
- 整定時間
ゲインを上げると整定時間を短くすることができますが、高剛性制振タイプはディスクタイプよりゲインを高く設定することができました。
- 位置決め精度・くり返し位置決め精度
ゲインやカップリングによる差異はありませんでした。
- オーバーシュート
ゲインを上げるとオーバーシュートが大きくなりますが、ゲインが同じであればオーバーシュートの差異はありませんでした。
- まとめ
整定時間はゲインを高く設定できる高剛性制振タイプがディスクタイプよりも短くすることができました。位置決め精度・くり返し位置決め精度・オーバーシュートはカップリングによる差異はありませんでした。
結果として、装置・設備のサイクルタイムを短縮するためには、高剛性制振タイプが有効であることが確認できました。
試験装置
アクチュエータ:KR30H THK㈱製
*ボールねじリード10mm
サーボモータ:HG-KR13 三菱電機㈱製
試験条件
モータ回転数:3000min-1
加減速時間:50ms
ワーク負荷:3.0kg
負荷慣性モーメント比:2.3
試験動作
正転(1rev)→停止(500ms)→逆転(1rev)試験方法
ワークの動きを変位センサで計測し、ワーク移動量および整定時間を測定する。
- 整定時間、位置決め精度およびオーバーシュート測定
ゲイン*1 | 高剛性制振タイプ | ディスクタイプ | 考察 | |
---|---|---|---|---|
23 | 整定時間(ms) | 35 | 32 | ディスクタイプが使用できるゲインの上限値です。 高剛性制振タイプは問題なく使用可能です。 |
位置決め精度(mm) | 0.014 | 0.014 | ||
くり返し位置決め精度(mm) | ±0.002 | ±0.002 | ||
オーバーシュート(μm) | 1 | 1 | ||
32 | 整定時間(ms) | 8 | ハンチング発生 | 高剛性制振タイプが使用できるゲインの上限値です。 ディスクタイプはハンチングが発生し使用できません。 |
位置決め精度(mm) | 0.016 | |||
くり返し位置決め精度(mm) | ±0.001 | |||
オーバーシュート(μm) | 2 |
*1: 位置制御ゲイン・速度制御ゲインなどのすべてのゲインを調整した値(最小:1-最大:32)
表中の値は、試験条件により異なります。
偏心反力
スラスト反力
温度による静的ねじりばね定数の変化
20℃における静的ねじりばね定数を100%とした場合の値です。XGHW-Cは温度による静的ねじりばね定数の変化が少なく位置決め精度の変化は極小です。高温下でのご使用にあたっては熱膨張に伴う軸の伸びやたわみによるミスアライメントに注意してください。
生産性と整定時間
サーボモータとボールねじを使用した一軸アクチュエータを利用した生産設備では、サーボモータとアクチュエータをプログラムの指令どおりに動作させることが、生産性向上につながります。しかし、実際の動作は指令に対して遅れが発生し、決められた位置でアクチュエータを停止させようとすると、指令よりも遅れて停止します。この遅れを整定時間といいます。
アクチュエータが完全に停止しないと次工程に移れないため、生産性向上のためには整定時間を短縮することが重要です。